『むくどりは旋回中』というタイトルを見て、「あれ？どこかで聞いたような」と思った人もいるかもしれない。
隠さず打ち明けると、これは1993年から1998年まで週刊朝日に連載されていた池澤夏樹のコラム、『むくどり通信』のちょっとひねった盗用。
むくどり通信には１年ごとのタイトルというのがあって、順に、
1.むくどり通信
2.むくどりは飛んでゆく
3.むくどりは千羽に一羽・・・・・・
4.むくどりの巣ごもり
5.むくどりとしゃっきん鳥
6.むくどり最終便
というネーミング。１はそのまま、２～４が「雄飛編」、４～６が「雌伏編」として、計３冊の文庫に収録されている。
よくもまああれだけ好奇心が持続するものだと感心しつつ、実はちょっとそれにあやかってみたいというわけ。
むくどりという鳥はとても好奇心の強い鳥で、江戸時代、椋鳥というと、田舎から江戸に出てきてキョロキョロしているお上りさんを指す俗語だったという。森永チョコボールの有名なキャラクターで、「キョロ」ちゃんというくちばしの黄色い鳥も、ひょっとしてモデルはむくどりなのか？（むくどりのくちばしも黄色）
ちなみに、池澤夏樹自身も、むくどり通信という名前は森鴎外の「椋鳥通信」という、海外の小さなニュースを紹介するコラムからの盗用であることを堂々と白状していて、『名もなき人のものを盗むのはこそこそしていけないが、天下の大文豪のものならば堂々と盗めるような気がしたのだ』と言い訳？を書いている。そんな池澤夏樹自身が、今では天下の大文豪であるのは間違いないので、ぼくなんかが盗用したくらいのことは、多分、笑って許してくれると信じてタイトルにすることにした。
「旋回中」というのは、未だに人生の着地点を見つけられずにぐるぐる回りつつ、何かというとキョロキョロしている、そんなぼくの状態を表現してみたつもり。
・・・・文体もちょっと似せてみました（笑）
