3乗換4路線

東京メトロ(旧:営団地下鉄)の定期券の話。首都圏在住でない人にとってはどうでもいい話だとは思うが、定期券発行にあたっての『一筆書き』ルールというのがちょっと面白い。メトロの路線は大変に入り組んでいて、同じような場所を複数の路線が走ったりしているのだが、必ずしも「交差」しているわけではなかったりする。それをうまく利用して、「同じ駅を2度通らない」という条件で、とても複雑な定期券を作ることができるのだ。ただし無制限に複雑にできるわけではなく、唯一の制約条件が表題の「3乗換4路線」まで、というわけ。

たとえば、大手町-(千代田線)-国会議事堂前/溜池山王-(銀座線)-上野-(日比谷線)-茅場町-(東西線)-西船橋という、23区の東半分をほぼ網羅しているような定期券でも、その料金は、単純に大手町-西船橋を発券した場合とさほど変わらないのだ。「3路線4乗換の一筆書きでどこまで長い定期が作れるか、どこまで名所を網羅できるか」などというのは、なかなかに面白いクイズになる。上記の例だと、始点を大手町でなく、北綾瀬まで持っていくことももちろん可能。

ただし(ここは重要な注意点)、「定期券は、その券面に記載された経路どおりに使用すること」という決まりもある。例えば実際に上記の例のような定期券を発券したとして、路線内に含まれる大手町や日本橋、それらの駅で乗降可能だからといって、「大手町-(東西線)-日本橋」と乗るのはご法度。自由な経路で自由にどの駅でも乗降したい場合は、少々高いが「全線定期券」を購入するしかない。

あともう1つ、あまり複雑な経路にすると、PASMO定期券が対応できず、磁気定期券にしかならないという問題と、おそらく同じ理由だとは思うが他社線との一本化(というのか?)ができないという問題もある。

上記の例だと終点は西船橋だが、西船橋にはJRも乗り入れている。そこで終点をちょっと伸ばしてJR船橋までという定期券にしたい場合はどうするか。単純に大手町-(西船橋経由)-船橋であれば、普通に1枚のPASMO/SUICA定期券で対応できる。しかし上記のような複雑な経路だと、メトロ側はメトロ単独の磁気定期券にするしかない。

要するにメトロとJRそれぞれで定期券を用意すればいいのか?と思うかもしれないがコトはそう単純では無い。東西線とJR中央緩行線(黄色い電車)は相互乗入をしているため、東西線~JR船橋は、「乗り換えなし」で行ける場合もあるのだ。このときに2枚の定期を使っているとややこしいことになる。何しろ乗った側の定期には出場記録が無く、降りる側の定期には入場記録が無いので、自動改札機を通れないのだ。

ところが、そんなケースも想定した救済策というのが存在した。「連続定期券化」とか「ビット処理」とかいうらしいのだが、メトロ側もJR側も磁気定期券にしておき、駅で申請すれば「入出場記録のチェックを無効化」する処理をしてもらえる。これでようやく、上記の例だと「茅場町からメトロ定期券で入場し、船橋ではJR定期券で出場」ということが可能になる。

繰り返しになるが、定期券では「経路どおりに」乗らないといけないというルールがある。しかし定期券でなく、普通の切符や、あるいはPASMO/Suicaを利用して乗車した場合にはどうなるか?その場合は、「一筆書きであれば」経路を問わない利用が可能になる場合があるのだ。(いわゆる大回り、迂回乗車。もちろん定期と違って途中下車ができないのが原則)

特にJRは関東地方一周などスケールの大きな迂回乗車も可能なので、そのぶん面白い反面、あまりにスケールが大きすぎて、いくらルール上問題は無くてもJRに対するマナーとして如何なものかという議論もあるようだ。このあたりは機会があればまた別の稿で。