今年(2013)のはじめに、長く閉館していた東洋館がリニューアルオープンしたというのが気になっていて、いそいそと出かけてみた。
そのついでにもう1つ見ておきたいものがあった。場所は東博の法隆寺宝物館のすぐ外側。ここに「博物館動物園前」という京成電鉄の廃駅の駅舎があるというのだ。そういう駅が昔あったということは知っていて、上野から京成電車に乗るとトンネル内の暗闇にぼうっと現れる地下ホーム跡を時々見かけては変な場所だとは思っていた。(今でも少し照明がついていて黄色い壁がよく見えるのだ)その入り口も一度は見たいと思いつつ、さほどの用事でもないので上野に行ってもいつも忘れていた。
初めて見ての印象は、「とても駅とは思えない(笑)」。おそらく博物館を意識したのか国会議事堂のミニチュアのような石造りの立派な建物なのだが、とても小さい(3m四方くらい)ので、赤いランプでもとりつければ「立派な交番」という感じ。解説入りのプレートがかけられていて、それによれば某NPO法人がこの駅舎とホームの有効活用を企画しているそうだ。
一度見て気が済んだので博物館入口に向かって歩いていると、いつもは閉まっている黒門が開いていて、ちょっとした人だかりができていた。何だろう?と見てみると、開いた門の向こうに見事な梅が咲き誇っている。どうやら休日に限って黒門を開けるという運用になったらしい。実は東博の中には小さな梅苑があってお気に入りの場所の1つだったのだが、黒門とこういう位置関係にあったというのは初めて知った次第。
とにかく入場して、東洋館に行く前に梅苑に戻ってみた。ここには十数本ほどの、古木といってもいいようないい感じの梅の林があるのだが、当日は満開で、あたり一面に梅の香りが漂っている。しかし「この程度の規模の梅林であればいたるところにある」と思われるかもしれないがさにあらず。
何が「さにあらず」かというと、この場所は宝物館の手前とはいえ博物館内ではややマイナーな場所なのか、ベンチと灰皿が設置されているのだ!感嘆符を打つような話ではないかもしれないが、昨今の喫煙規制の厳しさの中、ゆったり座って煙草をくゆらしながら梅を鑑賞できる場所というのは稀有ではないかと思うのだ。
・・・という長い道草のあと、ようやく目的の東洋館へ。閉館したのは何年も前だったので当時の記憶は定かではないのだが、そんな細かい記憶を手繰り寄せるまでもなく、閉館前当時とは全く変わっていた。とても同じ博物館とは思えない。(ここは感嘆符を打っても良いかもしれない)もちろん、いい意味での変貌だ。展示品自体が大きく変わったとは思えず、1つ1つは以前も見たような気がするので(気のせいかな?)、おそらく館全体としての印象が変わったのだと思う。大ざっぱにいうと、「見せてやっている」という帝室博物館的な感じから「楽しんでいってね」というフレンドリーな施設へと変わった感じ。
「テーマは旅!」というコンセプトを打ち出しているのも好感が持てる。大規模博物館は研究施設なのか啓蒙施設なのかというジレンマが常にあると何かで読んだことがあるが、今回のリニューアルは啓蒙施設のほうにも大きく舵を切った感じ。もともとは耐震工事のための閉館だったらしいが、その機会をとらえてこういう企画を推進してくれたスタッフのかたには大感謝。